コイル設計

コイルの設計

コイルの設計

1.設計って何

「コイルの設計」と言う作業を、簡単に説明すると、
この線材で、何回巻いて、こんな形にする
となります。別な言い方をすれば、「巻線仕様を計算する」となるでしょう。
・コイルとしたときの耐熱温度はどれぐらいか
・流す電流は、直流か交流か
・直流の場合、最大どれぐらいの電流を流すのか
・交流の場合、周波数はどれぐらいか、表皮効果を考慮するかどうか
・絶縁層がハンダの熱で溶けるかどうか
・融着線を使うか、ワニスを使うか

などがあり、主に熱に関係する点から線材が決められます。

何回巻くかの巻数は、コイルとして、
・抵抗値
・インダクタンス
・磁束密度
・外形
のどれを重要視するかで決まります。

形については、さまざまな用途があるので特に決まりは無いと思います。
一般的には、
・ソレノイドコイル
・トロイダル型コイル
・サドル型コイル
・ヘルムホルツコイル
・アルファ巻き
・矩形コイル(四角いコイル)
・扇形コイル
のような言い方で分類できるのではと思います。

2.設計の仕方

コイルは、大きく分けると4つの切り口で設計できます。

(1)コイルの形状を優先する場合
(2)抵抗値を優先する場合
(3)インダクタンスを優先する場合
(4)発生させる磁束密度を優先する場合

例えば、(1)と(2)、(1)と(4)など、複数の条件を組み合わせる場合もあります。
以下、具体的なお話をします。

(1)コイルの形状を優先する場合
コイルは、丸い電線や四角い電線を積層していくので、
ほとんどのコイル断面は、四角い形になります。
図1のように、パラメータW、H、φが決まっていれば、
コイルの断面積に収まる巻数が計算できます。
まず1層目に巻線可能な巻数N1は、
N1 = W/φ (本)
です。

積層可能な層数は、整列密着の場合、図1参照
n = (H-φ)/(0.866*φ) + 1 (層)
n層から、(n+1)層へ積層される箇所の層数をn’とすると、
n’ = H/φ (層)
です。

整列密着、積層例
図1

ソレノイドコイルの場合、n’の平均をって、
平均n = (n+n’)/2 (層)
この平均を、最初の目標値とします。
実際には、巻線条件で変わるので、現物合せで判断します。
矩形コイルの場合は、層とn’層を区別できるので、
4辺のうちの1辺を、n’層にします。図2参照

ソレノイドコイル、n'層図
図2

(2)抵抗値を優先する場合
抵抗値を優先すると言うことは、導体径を決めれば電線の長さが決まってしまうと言うこと。
従って、コイルの内径や厚さを決めたら、巻数が決まります。

(3)インダクタンスを優先する場合
当社では、主に長岡係数を使ったインダクタンスの計算式を使います。
計算結果は、誤差があるので実際に巻線しながら調整します。

(4)発生させる磁束密度を優先する場合
磁束密度を計算する方法はいくつかありますが、
ソレノイドコイルヘルムホルツコイルについて、簡単に記載します。
電磁気学演習書には、必ず載っていると思います。

ソレノイドコイル

 

ソレノイドコイル、図



(1)点Pの磁界の強さ

H=nI/2×(cosθ2-cosθ1) [A/m]
:単位長さ当りの巻数
I :電流値
θ1=90°の時、cosθ1=0



(2)点Pの磁束密度

B=μ0×H [T]
μ0=4π×10^-7=1.2566×10^-6 [kg・m・C^-2]
1[mT]=10[Gauss]



(3)単位長さ当りの巻数

n=N/L [回/m]
N:コイルの巻数[T]
L:コイルの長さ[m]



(4)目標の磁束密度を得るためのコイルの巻数

N=2・L・B/μ0・I・(cosθ2-cosθ1)

ヘルムホルツコイル


a=2b
a:コイル半径
b:中点とコイルとの距離
I:電流[A]
N:巻数[回]
Φ:コイル内径


ヘルムホルツコイル、図


上記計算式を、IやNに関して展開すると、
目標の磁束密度を得るための巻数や電流を逆算することもできます。

磁束密度の計算結果も誤差があるので、実際に作ってみて巻数などを修正します。
コイルの大きさが大きくなるにつれて、誤差も大きくなるような気がします。

いろいろな計算式が出てきましたが、エクセル等で計算させれば簡単に数字を出せるので、
興味のある人は試してみてはと思います。

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